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Housing File 95「奥沢の家」

豊かな敷地を分割せずに、一族3世帯で住み分ける


3つの世帯が一体となった外観

東南の角地に建つ住宅。フェンスの奥にある中庭を挟んで2つの棟に分かれている。写真右側の棟が次男、左側の1階が長男と母親、2階が長女夫妻の住まい。白とレッドシダーを対比させた外壁、長く延びたひさしや開口部、壁面の構成がリズミカルな表情を生む


家族共用の中庭テラス

家族全員が集まってバーベキューを楽しむ中庭テラス。愛犬の居場所でもあり、3つの世帯それぞれがこの中庭に面した開口部を持つ。1階のLDKには中庭に面した天井高4メートルの吹き抜けがあり、ここからシンボルツリーのヒメシャラと青空が眺められる


スリット状の窓で視線を調節する1階LDK

1階LDK南面は人通りの多い道路に面しているので、窓の大きさを絞って外からの視線を調節した。写真右手のスリット状の窓からは、桜の木を望む


バリアフリーの1階空間

高齢の母親が暮らす1階のキッチンは、車いす対応になっている。床は中庭から廊下までレベル差のないタイル張り。廊下には3世帯共通のダークブラウンの木の壁を用いた


長女夫妻が使う吹き抜けの2階LDK

母親世帯の上階に当たる、長女夫妻のLDK。ロフトまで吹き抜けた立体的なワンルーム空間である。引き伸ばし可能なダイニングテーブルでホームパーティーを楽しむ。ここでは、階段室にダークブラウンの木の壁を配している


賃貸可能な別棟の次男世帯

別棟になった次男世帯の2階。写真正面、南に向かって大きくひさしを張り出し、ハイサイドライトを設けて広がりのある空間とした


 母親と長女夫妻、独身の長男、次男が共同で建てた家です。将来の相続を視野に入れ、一つの敷地を3世帯で住み分けることが条件でした。

 敷地は緑道沿いの角地で、面積は約90坪。今や都区内では得がたい、恵まれた条件です。安易に分割することなく、建物全体に一体感を持たせながら、各世帯の個性に合った生活空間を提供したいと考えました。

 それぞれ生活時間が異なるので、道路からは別々のアクセスが必要です。他方で、敷地内のどこかに一家全員で共用できる場所が欲しい。そこで、中庭を囲んで3世帯を振り分ける、コの字型の配置計画を立てました。

 母親と長男の世帯は、中庭に面した西翼の1階。やや足が不自由になってきた母親のため、車いすにも対応できるバリアフリーの空間です。大型犬を飼っているので、LDKの床はタイル張りとし、雨水などが室内に侵入しないような措置を施したうえで中庭と同じレベルで連続させました。この中庭は、家族はもちろん、近隣の愛犬家たちも集まるコミュニケーションの場になっているようです。

 外階段でアプローチする、西翼の2階が長女夫婦の住まい。ピアノをたしなみ、来客の多いライフスタイルに合わせ、ロフトまで吹き抜けた広がりのある空間をつくりました。ロフトの外には屋上デッキが続いています。

 将来、ライフスタイルの変化によって、この地を離れる可能性もある次男には、独立した一棟を用意しました。車好きなので、2台分の車庫が使えるよう、東側の道路に面した一角です。玄関もほかの2世帯から離れた東側で、自分が住まないときは賃貸できるように考えてあります。

 内部は別々の3世帯ですが、外から見ると、開口部やひさし、壁面がリズミカルに連続しています。外壁は、白い塗り壁と木の壁のコントラスト。同様に、3世帯の室内にもそれぞれ木の壁を挿入して、イメージの統一を図りました。

 優しい木の質感をたたえた建物は、近隣の人々からも好感をもって受け入れられたようです。中庭テラスに植えたヒメシャラは道行く人の目も楽しませます。正面の窓はミラーガラスで、向かい側に立つケヤキの姿を映します。こうした規模の大きい住宅をつくるときは、景観に寄与する社会的責任があると考えています。

 周辺は同時期に造成された住宅地で、これから世代交代や建て替えが進むことが予想されます。敷地を細分化せず、子どもたちが共同で引き継ぐこの例は、今後の再開発に向けて、ひとつのモデルケースとなりうるのではないでしょうか。
(山中玄三郎/山中デザイン研究所)

奥沢の家

建築データ
  所在地: 東京都世田谷区
  家族構成: 母+長女夫妻+長男+次男
  竣工: 2005年11月
  敷地面積: 300.48平方メートル
  建築面積: 179.42平方メートル
延べ床面積: 290.84平方メートル
  構造・規模: 木造、地上2階+ロフト
施工: アイガー産業
設計: 山中玄三郎・北條忍/山中デザイン研究所
  写真: 畑 亮
連絡先  
  山中デザイン研究所
  代表: 山中玄三郎
  住所: 〒156-0051東京都世田谷区宮坂2-14-19
TEL: 03-3420-6896
FAX: 03-3706-3357
E-MAIL: y-design@s2.ocv.ne.jp
URL: http://www.
yamanakadesign.com/
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