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Housing File 96「三ツ沢の家」

土間や隣室とひと続きの浴室、癒やしの場を動線の中心に


高台に面した建物の外観

三ツ沢公園を望む見晴らしの良い高台に建つ。1階と2階にはそれぞれ屋外テラスを設け、景観を楽しめるようにしている


建物を東西に貫く土間

玄関を入ると細長い土間が延びる。正面に吹き抜け状の坪庭を配し、ここから右手の浴室と左手の階段へと動線を振り分けた。土間と浴室との間は扉なしで直接つながっている


シンプルで開放的な浴室

坪庭に面した明るい浴室。写真手前(南側)には屋外デッキも続く。浴槽部分は、防水コンクリートの床を掘り込んだもの。内部に段差をつけ、腰掛けられるようにしている。浴槽の中と坪庭にも照明を設置した


浴室に続く洋室

浴室に隣接する洋室。風呂上がりなどのひとときをくつろいで過ごす場となる。やはり扉はなく、浴室と同じ防水コンクリートの床で仕上げている


1階南側に広がるオープンデッキ
浴室と洋室の外側に広いオープンデッキを設けた。どちらの部屋からも直接出られる

光と眺望を味わえる2階オープンスペース

ワンルーム状の2階はリビングとして用いるオープンスペースとキッチン。1階坪庭の上部も光の通り道となっている。床には厚さ40ミリの柔らかいレッドシダーを用いた。反りなどは生じるが、温かい質感を持つ


 「リビングの中央にお風呂があってもいい」。最初にこのような要望が出るほど、浴室に対する思い入れの強いご夫妻が建て主でした。

 バリ島のリゾートホテルで体験した風呂の気持ち良さや空気感を再現したい。でも、全体をアジアンテイストでまとめたいというわけではなく、建物はむしろモダンでシンプルなものが好きというお話でした。

 私は以前、マンションのリフォームで浴室をガラス張りにしたことがあります。浴室に明かり取りの役割を兼ねさせると同時に、限られた家の面積の中で視覚的な広がりをもたらすのが狙いでした。

 浴室は1日の中で利用する時間は短いけれど、占めるスペースは小さくありません。湿気がこもるとカビの原因にもなるし、ほかの部屋とは素材の使い方が異なる。設計上なかなか厄介な場所といえるでしょう。

 でも、だからこそ、浴室のこうした特徴をむしろ積極的に利用したいと考えたのです。

 今回の建て主夫妻はこのマンション改修事例を見て来られました。浴室は家の中でもっと別の位置付けができるはず、という私の意見にも共感していただけました。最初の打ち合わせで意気投合し、4、5時間も話し込んでしまったほどです。

 もともとの要望は、最も景色の良い2階リビングの中央に浴槽を配置してもよいということでした。でも工事費や長期的な生活のしやすさを考えると、浴室を2階の中央に置くことがそこまで快適とは思えません。そこで、オープンデッキを設けた1階の南側に浴室を配置しました。

 玄関を入ると、直線状に延びる土間と坪庭が建物の中央を東西に貫きます。土間の南側には、坪庭に面して浴室を置き、洗面台の壁を隔てて洋室を並べました。現在は、入浴後にちょっとくつろぐスペースとして利用しています。

 土間を挟んだ反対側には、2階に上がる階段を設けたほか、寝室と納戸を配しました。2階はキッチンとオープンスペースです。坪庭の吹き抜けを通じて、1階浴室の気配を感じ取れます。

 浴室はリビングの中にこそありませんが、家の動線の中心に据えました。土間と浴室の間には扉をつけず、一体化した空間としています。また1階のオープンデッキや南側の洋室には、浴室を通って行けるようにしました。常に、浴室の存在を意識できるようにしているのです。

 浴槽は床を直接掘り込んだ形をとり、シャワーなど最低限の要素を配したシンプルな構成としました。写真には写っていませんが、建て主の要望でオーバーヘッドシャワーも設置しました。

 浴室と隣の洋室の床には防水コンクリートを打ち、そのまま仕上げ材として見せています。防水コンクリートは表面のきめが細かく、素足で歩いても気持ち良い素材です。下に断熱材を入れているので、冬でも冷たさは気になりません。

 浴室の照明は、天井のダウンライトのほか、浴槽の中と坪庭にも組み込んでいます。照明で照らし出された水面の揺らぎが、坪庭の吹き抜け越しにリビングからも見えます。これは予想外の効果でしたね。

 ご夫妻は普段、天井の照明はつけずにろうそくを灯し、浴槽と坪庭の照明だけで入浴しているとか。2階のオープンンスペースでも、ろうそくの光で夕食の時間をゆったり過ごされるそうです。

 ゆっくりできるのは週末くらいという多忙な夫妻ですが、新しい家での日常生活を積極的に楽しんでいます。こうした暮らしぶりを見ることは、設計者としてもうれしい限りです。
(石井秀樹/石井秀樹建築設計事務所)

三ツ沢の家

建築データ
  所在地: 横浜市神奈川区
  家族構成: 夫婦
  竣工: 2006年2月
  敷地面積: 132.56平方メートル
  建築面積: 52.99平方メートル
延べ床面積: 98.51平方メートル
  構造・規模: 木造、地上2階建て
施工: 栄港建設
設計: (建築)石井秀樹/石井秀樹建築設計事務所、(構造)荒谷由起夫/荒谷建築設計事務所
  写真: koichi torimura(Nacasa &Partners)
連絡先  
  石井秀樹建築設計事務所
  代表: 石井秀樹
  住所: 〒112-0005 東京都文京区水道1-5-24 2階
TEL&FAX: 03-3818-1172
E-MAIL: info@isi-arch.com
URL: http://www.isi-arch.com/
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