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Housing File 98「水平吹き抜けの家」

家族と子どものリビングを、段違いにつなげる


通りの突き当たりに見える家の外観

建物は、東西に延びる道路(写真手前方向)を受け止めるように位置する。2階の窓の奥には、家の中心となる水平の吹き抜けが続く


吹き抜け状の「家族のリビング」

オープンキッチンとつながる1階のリビング。家族が集う部屋を12畳の吹き抜け空間とした。正面の開口部は、空を見ることを意識した窓。そのためブラインドは下から上に閉まっていくタイプを採用している


1階と2階のリビングを結び付ける“水平吹き抜け”

家族のリビングから2階方向を見る。吹き抜けを介して2階の「子供のリビング」とつながっている


空間の奥行きを強調するL字形の列柱

水平吹き抜けに薄い柱を並べ、奥行き感を意識させるようにした。厚さ33ミリの板状の柱は上下4カ所を直径12ミリの鉄筋でつなぎ、構造上の耐力を確保している。ポリカーボネートの壁に映り込んだ隣家の影が、時間とともに移動する


2階の「子供のリビング」

東西を貫く水平吹き抜けに設けた2階の「子供のリビング」。白を基調としたインテリアに、赤茶のチェリー色で塗装した列柱が映える


垂直性を強調したエントランスガーデン

建物の出入り口に設けた吹き抜け状の前庭。室内の水平吹き抜けと対比させ、垂直性を強調している


照明によって水平吹き抜けが浮かび上がる夜景

外観夜景。壁に埋め込んだ照明が天井を照らし、反射した光で室内を白く浮かび上がらせる


 さいたま市郊外の住宅地に建つ住まいです。付近は新しい開発地と20~30年経過した住宅地が混在しており、ここは20年ほどたった宅地の一角にあります。約40坪の敷地が規則正しく続き、同じような形の家が建ち並んでいました。

 今回特徴的なのは、敷地が東西とも道路に接し、さらに東西方向に延びる道路の突き当たりに位置していることです。初めて現地を訪れたとき、東西への開放性を生かし、両側の道路をつなぐような「抜けた建物」にしたいというイメージがまず浮かびました。

 周囲の道路や建物を含めた模型を持参して計画の説明をすると、建て主夫妻もそれがいいと賛成してくださいました。そこで、敷地条件から得たこのイメージを徹底的に追求することになったのです。


 東西に細長い敷地に合わせて長方形の建物を置き、建物を貫く水平の吹き抜け空間を長手方向に設けました。筒形のこの空間を機能と構造の面でいかに強調していくかが設計上のテーマとなりました。

 家族は、夫婦と小学生の娘2人です。まず機能面では、この筒形部分に家の中心となる2つのリビングを配しました。1階の「家族のリビング」と2階の「子供のリビング」です。立体的にずらして配置した2つのリビングは、家族のリビングに設けた吹き抜け空間を介して緩やかにつながります。

 一方、構造面では、この筒形部分に沿って薄い板の柱を並べました。L字形の列柱はアカマツの集成材を用いており、450ミリの間隔で25枚並べています。柱を連続させることによって、筒形空間がもつ奥行きや連続感を感じさせるのが狙いでした。

 筒形空間の壁には、内側にポリカーボネート、外側にガラスを配した複層サッシを用いています。結露を防ぎ、近接して建つ隣家からの視線を遮りつつ、採光を確保するためのものです。

 実は、この壁面では予想外の効果を得られました。ポリカーボネートの壁に隣家の影が映り込むのです。時間や季節とともに影が動くので、室内にいながらにして外の変化を感じ取れます。生活にリズム感が生まれ、ご家族からも好評です。

 そのほかの部屋についても説明しましょう。

 西側の駐車場から扉を入ると、エントランスガーデンがあります。これは室内にある水平の吹き抜けと対比させるため垂直性を意識した吹き抜けの前庭で、将来は木を植えることを考えています。

 建物の中は、1階が家族のリビングとキッチン、水回り。2階は、「子供のリビング」を通って主寝室と子ども室にたどり着くようにしています。子ども室は、ロフト状のベッドの下に造り付けの机を置いた仕様で、姉妹の机を並べました。

 それぞれの個室は最小限に抑え、筒状の水平な吹き抜け空間に重点を置きました。これは、当初のコンセプトを建て主夫妻がよく理解してくれたからこそ実現できたのです。

 2階のリビングで子どもたちが遊んでいるときも、お母さんは自分のペースで家事などができます。空間は上下に分かれていますが、声が聞こえて気配を感じられるので何かあったらすぐ分かります。程よい距離感を得るために有効な方法ではないでしょうか。
(今永和利/今永環境計画)

水平吹き抜けの家

建築データ
  所在地: さいたま市
  家族構成: 夫婦+子2人
  竣工: 2006年8月
  敷地面積: 101.30平方メートル
  建築面積: 60.75平方メートル
延べ床面積: 107.49平方メートル
  構造・規模: 木造(木板+鉄筋)・一部鉄骨造り、地上2階建て
施工: 大勝建設
設計: (建築)今永和利/今永環境計画、(構造)山崎亨/山崎亨構造設計事務所
  写真: 守屋欣史(Nacasa&Partners)
連絡先  
  今永環境計画
  代表: 今永和利
  住所: 〒157-0073東京都世田谷区砧7-2-21-207
TEL: 03-3415-7801
FAX: 03-3415-7864
E-MAIL: info@imanaga.com
URL: http://www.imanaga.com/
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