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都市住宅と私の冒険 狭小住宅イズム  
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都心の小さな土地に家を建てて住む、「狭小住宅」が静かなブームになっている。建築家の黒崎敏は30代半ばにして、熱いスピリットと優れたアイデアで、この分野のトップランナーに躍り出た。これは、建築家と建て主が理想の都市住宅づくりを目指す「クリエーティブな冒険」の物語だ。

 
文/黒崎敏 狭小住宅論 一般建築論

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「都市住宅と私の冒険」


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都市住宅との出合い

 都市住宅を初めて手掛ける機会を得たのが今から8年ほど前。

 以来、その奥の深さに魅了されながら、数多くの建て主が暮らす都市住宅との出合いを続け、新たな発見を繰り返しながら過ごしてきました。

 振り返れば、いずれの空間にも、そこに暮らす人々らしさや魅力が凝縮されており、小さな家だからこそ生み出された独特の居心地が存在したのを思い出します。

 このような濃密な空間づくりには、豊かな経験に裏打ちされた、つくり手の高度な技術やセンスはもちろんですが、それに加えて、建て主の力もまた不可欠な要素でした。

 住み手が自分や家族と対峙(たいじ)しながら空間のあり方を模索する中で、新たな発見や失望を繰り返しつつ、設計者とともに互いの信頼を築き上げていく過程にこそ、良い住宅となり得るヒントが隠されていたといえるでしょう。

 このように、建て主との素晴らしい協働作業を経て完成した小さな空間に魅了された若い建築家は、きっと私だけではないはずです。

 つくり手と住み手が濃密な時間を経て生み出した一つの結晶としての住宅には、互いの身体の一部であるかのような愛着を感じるものです。
 筆舌に尽くしがたい安心感やフィット感は、お金を出しても到底手に入らないぜいたくな感覚です。

 これまで設計し引き渡してきた都市住宅に対しても、手塩にかけて育て上げた親としては、我が子に対する愛情や責任感、寂しさや期待が入り混じった、複雑な感情が存在していたように思います。

 住宅は生き物である、と実感できるようになったのは、このような都市住宅との出合いや別れを繰り返してきたおかげかもしれません。

 つくり手や住み手の意識次第で、小さくても力がみなぎる建築をつくり上げることができる。
 そのことを知った私は、都市住宅の虜(とりこ)になってしまいました。今でも建築に対する基本的な姿勢になっているほど、貴重な経験だったのです。

 力がみなぎる建築を様々な人々に体感してもらいたいと願いながら活動を続けるうちに、共感してくれる建て主や、設計スタッフ、施工会社、協力事務所の人々など、数多くの出会いがありました。

 そのすべてが、都市住宅が産声を上げる瞬間なのです。
海沿いの敷地に建つ4階建て鉄筋コンクリート造り(以下、RC造)の都市住宅。前面に広がる最高の景色を獲得するために、スキップフロアにし、どの空間からも海を楽しめるように配慮した。塩害の影響を抑えるためにも、様々な技術が必要である(2008年6月完成予定)

地下1階・地上4階建ての2世帯RC造狭小住宅。建築面積わずか8坪ながらも、2世帯合計で6人が暮らす。東京の中心に建つ典型的な都市住宅であり、このような形態は今後ますます増えていくと思われる(2007年11月完成予定)

地上7階建てのツインタワーは、隣同士の異なるクライアントからの依頼により、同時設計、同時施工が実現したRC造狭小ビル。同時計画によるコストメリットを出しながら、2つのファサードを合わせることで、デザインの調和も目指している(2007年5月完成予定)

平屋の専用住宅の計画。郊外で敷地に余裕がある場合は、上に重ねるのではなく、建ぺい率を最大限に利用したコートハウスも可能。自分だけの空を獲得することができるのは、戸建て住宅の特権であるといえよう(2007年12月完成予定)


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