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都市住宅と私の冒険 狭小住宅イズム  
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都心の小さな土地に家を建てて住む、「狭小住宅」が静かなブームになっている。建築家の黒崎敏は30代半ばにして、熱いスピリットと優れたアイデアで、この分野のトップランナーに躍り出た。これは、建築家と建て主が理想の都市住宅づくりを目指す「クリエーティブな冒険」の物語だ。

 
文/黒崎敏 狭小住宅論 一般建築論

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「K」
6坪に集う大人の家


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都会の変形敷地

 「SEVENを見て共感しました」
 大手広告代理店に勤務する、次なる狭小住宅の建て主からかけられた言葉です。
 翌年に控えた定年退職を見据え、愛する家族と、都会の小さな家で、穏やかなセカンドライフを楽しみたいとのことでした。

 建て主はもともと、札幌で建築家が設計した一軒家に住んでいましたが、7年前の転勤を機に、家族3人で浦安のタウンハウスに移り住みました。
 都会での暮らしやすさを知った建て主は、社宅の期限が迫る4年前に家づくりを決心。土地探しが始まったというわけです。

 「小さくてもいい。利便性を重視したい」
 そう話す建て主が選んできた土地は、都心からのアクセスも良く、学生時代から愛着の深い学芸大学駅。
 にぎやかな商店街から程近い、わずか12坪程度の土地でした。

 早速、現地に足を踏み入れると、予想通り、厳しい条件が目に飛び込んできます。
 住宅密集地にあるその土地は、2方向の狭隘(きょうあい)道路に面し、セットバックを余儀なくされます。境界線もあいまいで、施工条件も厳しく、変形敷地というオマケまでついていました。

 このような土地ではまず、隣地や道路の境界線を明確にし、セットバックを含めた有効面積を確認しながら、慎重に設計を進める必要があります。
 そこで私は、不動産、測量士、構造家、施工者などの専門家の協力を仰ぎながら、土地や建物の正確なボリュームを確認することから、設計をスタートさせました。

 この周辺は2階建てエリアなのですが、要望に応えようとすれば、3層が必要になります。
 また、RC造打ち放しが希望でしたので、コストの制約から杭基礎を避け、地盤の強度を確認した上で、ベタ基礎としての計画が必須でした。
 階高の検討を繰り返しながら、建物を半地下とすることで3層を確保することに成功したのは、設計を開始して2カ月が経過した時のことでした。
 浮かび上がる建物の輪郭を意識しながら、いよいよ内部の構成に取り掛かります。
コンクリート打ち放しによるマッシブなフォルム。水平に切り取られた細長いサッシとトップライトが印象的

道路に面した奥様のコンパクトな寝室。ハイサイドに設置されたコーナーサッシから光が降り注ぐ

住宅が密集する変形敷地にひっそりとたたずむ「K」の夜景。開口部から漏れる光から、内部での生活の様子がうかがえる

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