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都市住宅と私の冒険 狭小住宅イズム  
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都心の小さな土地に家を建てて住む、「狭小住宅」が静かなブームになっている。建築家の黒崎敏は30代半ばにして、熱いスピリットと優れたアイデアで、この分野のトップランナーに躍り出た。これは、建築家と建て主が理想の都市住宅づくりを目指す「クリエーティブな冒険」の物語だ。

 
文/黒崎敏 狭小住宅論 一般建築論

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「狭小構造デザイン」


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建築家と構造家

 「住宅」とは、紛れもなく、設計や施工などの専門家の力が集結することで完成する“結晶”です。
 中でも、「建築家」と「構造家」の両者は、不即不離の関係にあり、お互いの存在を抜きに、デザインを語ることはできません。
 それでは、建築における「構造」の役割とは、一体どのようなものなのでしょうか。

 「構造設計」の主な仕事は、建物を支える柱や梁などの部材を適切に配置し、その断面形状や接合方法を決定すること、また、構造計算により、建物自重や地震、台風に対して十分な強度を持つことを確認することです。
 「構造家」は、これらを踏まえた上でさらに一歩進み、建築家の考えるデザインとの間の橋渡し役を担う、影響力のある存在といえます。

 厳しい条件が複雑に絡み合う「狭小住宅」では、その存在はさらに重要になります。
 「狭小住宅」の場合、敷地の小ささゆえ、一般的な構造計画の手法が通用しません。そのため、通常とは異なるアプローチを強いられることになります。

 例えば、一般的な構造部材や施工方法が採用できないことも日常茶飯事です。
 ただでさえ小さな敷地で、できるだけ大きな空間をつくり出そうと考えているわけですから、大きな柱や梁が存在していては、空間が台無しになります。
 そもそも、部材が大きすぎて現場に搬入ができなければ、施工のしようがありません。

 そこで、建築家と構造家が知恵を出し合い、プロジェクトの最適解を探り合うわけですが、その際に重要なのは、常識的な発想を封印し、ゼロから考え始めることでしょう。
 一般的には非常識なことでも、小さな敷地では常識になり得ることがあります。
 このことは数多くの狭小住宅の設計を通し、建て主から教わった極意であり、今では、大小問わず建物を計画する際にも、大いに役に立っています。
 我々つくり手側が、限られた条件の中で、どれくらい自由に発想できるかが、まさに問われているのです。
狭小地では、建物内部に柱型や梁型を露出させないよう、できるだけ細い柱や梁で構成することが要求される

工場であらかじめ製作された軸組パネルが現場に搬入されるや否や、あっという間に組み上がる

神社の鳥居が連続するような構造模型。構造デザインが建築デザインに直結している


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