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都市住宅と私の冒険 狭小住宅イズム  
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都心の小さな土地に家を建てて住む、「狭小住宅」が静かなブームになっている。建築家の黒崎敏は30代半ばにして、熱いスピリットと優れたアイデアで、この分野のトップランナーに躍り出た。これは、建築家と建て主が理想の都市住宅づくりを目指す「クリエーティブな冒険」の物語だ。

 
文/黒崎敏 狭小住宅論 一般建築論

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「狭小コンクリート住宅」


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RC造でつくる小さな宝石

 これまで、私が手掛けてきた狭小住宅の中で、最も多い構造は鉄筋コンクリート(RC)造によるものです。
 不思議なことに、私の事務所で計画中の住宅プロジェクトも、RC造が大半を占めているのが現状です。
 これは、都市で活動する設計事務所ということもありますが、どうやら、理由はそれだけではなさそうです。

 例えば、都市部で重要視される防火や耐震を求めるのであれば、ほかに「鉄骨造」という選択肢もあります。
 小さな敷地での施工を考えれば、「RC造」よりむしろ「鉄骨造」が向いているといえるでしょう。
 コストに関しても、最も高額なRC造を、建て主があえて選択するのには、何か特別な理由が存在するとしか思えません。

 思い起こせば、私が初めて手掛けた狭小住宅「SEVEN」もRC造でした。
 建て主はきれいな「打ち放し」にあこがれを抱き、時を経るごとに味わいが増す外観や、静謐(せいひつ)な内観のイメージを、実にうれしそうに話してくれたことを思い出します。

 今ではすっかりおなじみの「打ち放し」も、先人たちの試行錯誤の成果もあり、近年では品質面、施工面で、格段に安定してきました。
 「打ち放し」が技術的な成熟期を迎える一方で、愛好家のあこがれや美意識も、旧来のストイックでクールなイメージだけではなく、明るく軽やかなイメージへと、少しずつ変化しているようです。

 これまで私がRC造を手掛ける中で、一貫してこだわり続けてきたことがあります。それは、密度の高いコンクリートをつくる、という大変シンプルなことです。
 コンクリートは、その密度を上げることで、安全性や品質、機能を確保できるのはもちろん、意匠的にも強さや美しさが「品格」となって現れてくるのです。

 例えば、硬質なダイヤモンドの素晴らしい輝きが、単に表面上の問題だけではないように、緻密(ちみつ)な配合や、施工監理によって出来上がるコンクリートの肌は、きめ細かい上質な仕上がりとなり、ひいては、空間に大きな影響を与える存在となり得るわけです。

 もしかすると、私の事務所を訪れる「打ち放し」愛好家の皆さんは、宝石にもなり得るコンクリートの本質的な魅力に、本能的に気が付いている人たちなのかもしれません。
たっぷりと日の光を浴びた昼のコンクリートの表情は、ストイックというより、むしろシンプルで清潔感のあるイメージが強い

日が落ちた夕方のコンクリートの表情は、内部照明とのコンビネーションで、独特の色気を醸し出している

時にコンクリートの表面は、住宅を取り巻く様々な影を映し出す、格好のキャンバスにもなり得る


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