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Topics 145「ファンズワース邸」 ナビゲーター 坂野美由紀(リネア建築企画)
モダニズムの原点を示す、巨匠ミース最後の住宅

ビジターセンター

ファンズワース邸外観

外からキッチン側を見る

ファンズワース邸に続く遊歩道

テラス側外観

ユニバーサル・スペースと呼ばれる室内
 
 20世紀の巨匠ミース・ファン・デル・ローエは、プロモントリィ・アパートメントやレイクショアドライブ・アパートメントなど、現在のデザイナーズマンションの原点ともいえる集合住宅を建てた建築家である。「ファンズワース邸」は、そのミースが最後に建てた住宅だ。森の中という自由な立地と、住宅という規模の小ささゆえに、ミースの建築思想が最も純粋に表現された建物ともいわれている。

どんな場所に建っているのですか。

坂野 シカゴから車で1時間程度のところにある、イリノイ州プラノという場所です。あたりはまるで自然公園のような環境なんです。実際に行ってみると、オゾンいっぱいという感じで、とても気持ちのいいところでした。建物は現在、ナショナルトラストが所有、運営していて、事前に予約すれば誰でも見学できます。

もともとは誰かの別荘だったのでしょうか。

坂野 この住宅は、エディス・ファンズワースという女性外科医のために、週末別荘として建てられたものです。エディスとミースは恋人同士だった時期もあるとか。けれども、竣工後、ふたりの間で工事費を巡る訴訟が起きたことはよく知られています。結果的にはミースが勝訴したそうです。

現地を訪れてみて、建物の印象はいかがでしたか。

坂野 緑豊かな環境の中に、白とガラスの端正な建物がひっそりと建っている様子はなんともいえない美しさでした。地面から1.6メートルほど浮かせた薄い床と、水平の薄い屋根とが8本の鉄骨柱で支えられており、その間は全面ガラス張りになっています。内部は中心にバスルームやキッチンを設けたコアが組み込まれている以外、間仕切りのないワンルーム。これは、住む人が自由に使う「ユニバーサル・スペース」と名付けられた空間です。

 I型の鉄骨柱によるシンプルな構造といい、「ユニバーサル・スペース」といい、ファンズワース邸はミースの建築思想を実によく表現した建物です。同時にまた、この後ミース自身が手掛けたシカゴの高層オフィスビルへと発展させるための、実験的な意味合いも込められていたのではないでしょうか。モダニズムの原点といえる建物です。

竣工は1951年。ミース65歳前後の作品ですね。

坂野 1951年といえば、Topics116で取り上げた、ル・コルビュジエの「ユニテ・ダビタシオン」(1952年竣工)と同時期の建物ということになります。ユニテはどっしりとしたコンクリートの建築であるのに対し、こちらは軽やかな鉄とガラスの建築。ル・コルビュジエとミース・ファン・デル・ローエ、20世紀を代表するふたりの巨匠が、同じ時期にまるで違う方向に向かっていたということもおもしろいですね。
(萩原詩子/フリーライター)

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