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ノルマンディー 豊饒の庭  
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La Normandie
文・写真:滝田順 ガーデンマップ
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Profile
滝田 順(たきた・じゅん)

アーティスト。1966年東京生まれ。88年日本大学芸術学部卒業後、89年渡仏。パリ国立美術学校でピョートル・コワルスキーのゼミを聴講した後、91~92年、同大学フランス政府給費生。
主に、光合成や生体発光現象など生物の光変換をテーマとした彫刻や、庭の視覚効果に関する作品を制作する。
遺伝子操作によって生体発光する苔(こけ)を用いた東京のビルの屋上庭園計画案は、フランスやアメリカなどでも紹介され、注目を集める。2004年には、同様の苔を用いて、現代の生命観に対し、人間がいかにあるべきかを問いかける作品「Light only light」を、ベルサイユ国立農業試験場と名古屋大学情報科学研究科の協力を得て制作。オーストラリアのパースで開催された、アート&テクノロジーのビエンナーレにおいて発表した。
また、水戸芸術館では、日本庭園の伝統的材料であり、里山での暴力的な増殖が問題化している竹をモチーフとした彫刻作品を制作する。垂直に立てられた大きな竹の塊は、鑑賞者の視点の動きや光の条件でその様相を変化させる。庭園空間における竹の新たな表現の可能性を追求した。
アーティストとしての活動のほかに、1993~95年、パリ、ユネスコ本部のイサムノグチが制作した日本庭園の改修に携わる。ベルサイユ国立造園学校と日本の造園会社の協力を得て、改修を実施。将来フランス人によってメンテナンスが行えるよう、フランス語の管理マニュアルを作成し、10カ年のメンテナンス計画を日本ユネスコ協会などに提案した。 さらに、フランスの公共美術と都市計画の現状などを、日本のメディアに紹介している。

「エネルギーの変換」作品写真
「エネルギーの変換」
1991年制作。メチルアルコールに葉を浸けると、細胞壁が破壊され葉緑体が流出する。通常、葉の中の葉緑体は、光を受け取ると、光子受け渡しの連鎖反応をグループで行い、その集団同期行動によって光合成作用が行われる。しかし、液体の中で単独となった葉緑体に、紫外線のような短波長の光線を照射すると、それぞれの葉緑体が赤い蛍光色を発する。作品は、葉緑体の生体反応を利用し、光のエネルギー変換を視覚化したものである
「発光植物による屋上庭園」作品写真
「発光植物による屋上庭園」作品写真 「発光植物による屋上庭園」作品写真
「発光植物による屋上庭園」
2002年、屋上庭園の中央に位置する彫刻のイメージ。東京のあるビルのために提案した。半円形に刈り込まれた植物の後方に、遺伝子操作で蛍と同様の発光能力を有した苔を配し、昼と夜で、風景の「図」と「地」を反転させる。この計画案は、03年、フランスのナントの現代美術館で行なわれた「art biotech」展で発表し、04年に発行されたアメリカのアート&テクノロジーの雑誌「LEONARDO vol,37」に記事が掲載され、その号の表紙に使用された

「青い山のシルエット」作品写真 「青い山のシルエット」作品写真
「青い山のシルエット」
2003年、水戸芸術館の企画展で制作。高さ4×幅5×奥行き5.5メートル。
薄暗い部屋に置かれた作品は、展示空間に入った直後、視覚が暗闇に慣れないことにより、平面的なイメージに見える(写真左)。作品の周囲を巡り、数分たつと次第に目が暗闇に慣れ、竹山の肌がはっきりと見え始める(写真右)。また、竹の塊全体を俯瞰(ふかん)できるのは、写真左(写真右)の入り口付近の1シーンだけ。後は近距離の鑑賞となり、竹山の姿の記憶は、鑑賞者の頭の中で細分化され、各自の記憶によってそれぞれの竹山のイメージが構築される

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