TOPLiving Style路地裏の極上住宅

優れた住宅をつくろうとするとき、その原動力になるのは、建て主が見せる強い意欲とパワーであり、建築家が示す熱いスピリットとアイデアである。東京において、極上住宅は路地裏に生まれ、育ち、鍛えられてきた。これは、路地裏で身を粉にしてきた建築家が、活動の舞台を表通りにまで広げ、さらなる極上住宅をつくろうとする物語である。

「コートハウス」 ~中庭という極上~

人や空間を触発する「中庭」

 建築家が建て主と共に熟考し、こだわりを持つ技術者によって丁寧に施工された「極上住宅」には、オリジナルのストーリーが宿り、熱烈なファンにより永く愛され続けています。

 この連載では毎回異なるキーワードを通じて、住空間がいかに「極上」へ昇華したのか、また「極上」とはいったい何かということについてお話して参りたいと思います。まず、初めは、「中庭」という極上から。

 パーティ好きの建て主夫妻が、新たに新居を構えるために購入した下町の住宅地は、東京を代表する花火大会が目の前で行われる絶好の敷地でした。前面道路の拡張計画や、いびつな変形敷地であることも幸いし、比較的安価に購入できた個性的な敷地を最大限に生かすべく、我々は、いくつかの異なる中庭を挿入した住宅を計画しました。

 大小4つのプライベートな中庭により、外部を内部化する設計手法の中には、「極上」のヒントが数多く潜んでいます。

バスルームから眺めるバスコートは廊下を介することで視覚的広さを確保し、通り庭にも似た空間を生み出している(写真、西川公朗)

 1つめは「バスコート」。玄関を入ると目の前に見える坪庭は、長屋の「通り庭」にも似た中間領域です。バスルームからは廊下を挟んでガラス越しに庭の風情が楽しめ、木製ブラインドの開閉によりプライバシーも確保することができます。内部空間と融合し、一体感を生み出しながら、玄関の明かりとりとしても機能しています。

 2つ目は「キッチンコート」。さながらバーのようなカウンター式キッチンの正面に見える吹き抜けの中庭にはシャープな光が降り注ぎ、正面に見えるコンクリート打ち放し壁にドラマティックな陰影を描きます。あまりの心地良さから、家事を行う奥様の特等席になっているのもうなずけます。

 3つ目は家のシンボルでもある大きな「アウトサイドコート」。せり立つ両側の壁面により切り取られたプライベートスカイは、密集する周辺環境を忘れさせてくれるほど快適で、正面の木製ルーバーによって十分にプライバシーも確保されています。休日には中央に設えたハンモックに揺られながらうとうとできる、なんとも贅沢(ぜいたく)な空間です。

 そして4つ目は「ルーフコート」。アウトサイドコートと階段でつながるセカンドコートは、主に花火大会やバーベキューなどの際に使用され、景色を楽しみながら大人数で楽しむことが可能です。いつも仲間がたくさん集まる建て主のライフスタイルにぴったりな外部空間といえるでしょう。

キッチンの正面に見えるキッチンコートにはシャープな光が降り注ぎ、キッチンを柔らかな光で包み込む(写真、西川公朗)

LDKとつながるアウトサイドコート。両側の壁に取りつけられたハンモックが、都会の時間にゆとりを与える(写真、西川公朗)

 中庭を持つ「コートハウス」が実際の面積以上の広さを感じるのは、透明ガラスによって隔てられた内外空間が連続するからであり、「広く感じるし、何より明るい」と語る建て主は、この中庭のおかげでいつも晴れやかな気分でいられると喜んでいます。

 中庭に降り注ぐ光は、四季や天候、時間によってその姿形を変えていきます。うつろいのある空間は何物にも代えがたく、まぎれもなく都市住宅の醍醐味(だいごみ)であるといえるでしょう。中庭はゆとりや豊かさそのものであり、その空間でしか味わうことができない物語を家族や仲間が共有することにより、真のオリジナリティーが芽生えるのかもしれません。

ルーフコートからアウトサイドコートを見下ろす。せりたつ両側の壁が都市のプライバシーをプロテクトしている(写真、西川公朗)

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