TOPLiving Style路地裏の極上住宅

優れた住宅をつくろうとするとき、その原動力になるのは、建て主が見せる強い意欲とパワーであり、建築家が示す熱いスピリットとアイデアである。東京において、極上住宅は路地裏に生まれ、育ち、鍛えられてきた。これは、路地裏で身を粉にしてきた建築家が、活動の舞台を表通りにまで広げ、さらなる極上住宅をつくろうとする物語である。

「ふたりの家」 ~DINKSという極上~

「ふたり」という極上

 共働きで子どもを持たない夫婦、またはそのような生活観のことをDINKS(Double Income No Kids)と呼びます。女性の社会進出が当たり前になってからというもの、とりわけ都市部ではこうしたカップルが増え、男性は仕事、女性は家庭というような常識はすっかり消えてしまいました。

 言い換えれば、これは女性が自立し始めた証しであり、1986年に男女雇用機会均等法が施行されて以来、男性に肩を並べるキャリアウーマンが台頭したことが要因です。DINKSのスタイルをパートナー同士が認め合い、互いのキャリアを高め合うことで、旧来型の夫婦の役割に縛られず、互いが公平に生活を送るスタイルが浸透していきました。

 最近では、DEWKS(Double Employed With Kids)と呼ばれる、共働きで子育てをする夫婦も増えてきました。これは現代におけるDINKSのさらなる進化形であり、成熟期の男女共生社会を象徴するようなスタイルであると考えられます。

角地の敷地を利用し、向かい側にある大きな桜の木を眺めることができるよう、北側コーナーに眺望用の水平連窓を配置した「L」のファサード(写真、西川公朗)

 DINKSを選択する理由は人によって様々ですが、結婚をすれば子どもを持つものという社会通念が消えたことは確かなようです。自らのことは自らで決める彼らは、家づくりにおいても独特のスタイルを持っており、建築家によるオーダーメードを目指すクライアントはDINKSが数多くを占めています。

 彼らは「子どもができたから、そろそろ家でも持とうか」というような考えではなく、自分たちの生活を楽しむためにこそ家が必要であり、互いのライフスタイルがバランス良く反映された家を目指すからこそ建築家に依頼する価値があると考えているようです。

 DINKSの住まいはそれぞれの目的が異なり、生活スタイルに大きな制約がないため、旧来とは異なる家のプランやデザインが生まれる可能性が高くなります。親や子どもなどに縛られず、DINKSならではの自由な発想で、家づくりのプロセスそのものも、おのずと楽しいものになります。

DINKSが暮らす「KNOT」のファサード。マッシブなコンクリートから透明の箱が引き出されたようなシンプルな構成としている(写真、西川公朗)

スキップフロアで構成され、緩やかにつながるLDKを見る。それぞれの部屋に付帯するバルコニーが空間にさらなる奥行きを与えている(写真、西川公朗)

 また、彼らは時間の使い方もよく知っています。限られた時間を有効に利用しながら打ち合わせを進め、てきぱきとした決定力で計画を推進していきます。考えてみると、我々建築家と家づくりを目指すDINKSは極めて多忙な人が多いのですが、かえって時間のある人よりも素晴らしい選択でゴールに到達しているから不思議です。

 これはきっと仕事で培ったバランス感覚であり、とりわけ仕事でモノづくりや企画に携わる人々は、初めてとはいえないほどの域に達している人も少なくありません。彼らは、家づくりは多くの専門家が携わるため「餅(もち)は餅屋」の考えで臨むのがいいことをよく分かっており、携わる人々を積極的に巻き込みながら絶大な信頼を与え、思う存分楽しんでいるようにも見えます。

 そのようにして出来上がったDINKSの空間には個人の自由や夫婦の楽しみが盛り込まれ、双方のキャリアをアシストするための工夫が随所に見られます。その自由な空気に極上感が宿り、結果として傑作になることも少なくありません。家という、ともすれば保守的になりがちな空間に新風を吹き込んでいます。

 それでは我々が手掛けた幾つかのDINKS住宅の実例の中から、極上の空間をご紹介していきたいと思います。

3階建ての店舗併用住宅である「la poser」のファサード。1、2階はセレクトショップとカフェ、3階にオーナー住居を配置しているDINKSのSOHOである(写真、西川公朗)

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