TOPLiving Style路地裏の極上住宅

優れた住宅をつくろうとするとき、その原動力になるのは、建て主が見せる強い意欲とパワーであり、建築家が示す熱いスピリットとアイデアである。東京において、極上住宅は路地裏に生まれ、育ち、鍛えられてきた。これは、路地裏で身を粉にしてきた建築家が、活動の舞台を表通りにまで広げ、さらなる極上住宅をつくろうとする物語である。

「シェアハウス」 ~ライフシェアリングという極上~

再び2世帯の時代へ

 日本が成熟し、個人を尊重する時代に入ると、家族の問題は複雑化し、嫁と姑(しゅうと)の確執など、両親との同居に関しては消極的なイメージを抱く若い夫婦が増えてきました。自らの自由を奪われるような、どこか窮屈なイメージがまん延したせいか、茶の間を囲む大家族の構図は都市部を中心に消滅し、核家族は瞬く間に拡大していったのです。

 しかしながら、少子高齢化が進む現代においては、同居という形式は互いにとって都合が良く、それぞれが別々に生活するよりもたくさんのメリットがあることから、家づくりの際にも同居が前提になるケースが再び増え始めてきました。

コンクリート打ち放しとセランガンバツ木製ルーバーによる端正なファサードが印象的な、2世帯住宅「FOO」(写真、西川公朗)

 例えば、共働きの若い夫婦の場合、小さな子どもの面倒を見てもらうことを考えると両親の存在はとても心強く、同居することによって子育てに追われて不足しがちな大切な2人の時間をつくり出すことができます。食事の用意なども一緒に行うことで効率が上がり、大勢で食卓を囲めば、楽しい団らんを味わうこともできます。

 もちろん、両親にとっても同居のメリットは計り知れません。まず、すべての高齢者の悩みでもある病気の心配を軽減できます。また、孫の顔を見ながら生活することで、生き生きとした生活バランスが生まれると同時に、子どもの教育などにも良い影響をもたらすでしょう。

 今すぐにではないものの、将来の同居に備えて家づくりを考える人も増えてきました。とりわけ、両親に家づくりのスポンサーになってもらう場合などは、スペースはもちろん、間取りや仕様などの選択決定権が両親に割り振られていることも少なくありません。

 親にとっては子どもの家づくりに協力したいという気持ちに加え、自分たちの将来の安心も確保できることから、家づくりへの金銭的なアシストに積極的になっています。不況の世の中でも「住むところくらいは確保してあげたい」という親心と、その行為に遠慮なく甘える若夫婦の考えは、おおむね合致しているといえるでしょう。

「FOO」の内部を見る。ダイニングからはリビングに連続した庭園と吹き抜けを介して空を眺めることができる(写真、西川公朗)

ダイナミックな吹き抜けがあるLDK。吹き抜け上部の大開口から光が降り注ぎ、空間を柔らかく包み込む(写真、西川公朗)

 同居の秘訣は「必要以上に干渉し合わないこと」だそうです。長屋のようにすることで、スープの冷めない関係を確保したり、玄関は別にし、内部で緩やかにつながるプランにしたりするなど、精神的な距離感をデリケートに設計していく必要があるようです。

 付かず離れずの絶妙な距離感は家族によってそれぞれ異なるため、しっかりと見極めるためには、丁寧にヒアリングすることから始めなくてはなりません。加えて、家族全員で打ち合わせを行う場合には、どうしても家族の力関係が発生し、意見が偏りがちです。とりわけお嫁さんはどうしても無口になりますから、時には個別に意見を聞き、皆の前では思い切って言えない本音を引き出すことも、大切な設計プロセスです。

 シンプルな「ひとつ屋根の下」ではない現代の2世帯住宅は、気に入った仲間が共に生活する「最小単位のコレクティブハウス」のような形式が心地良さそうです。そこには、互いを尊重する思いや世代を超えて見守る愛情など、皆で分け合う、すなわち「生活をシェアする」という感覚が垣間見えます。

中央に配置した階段や吹き抜けを取り囲むように、床レベルをずらしながら部屋を配置した2世帯5人の都市型狭小住宅「STEPS」(写真、西川公朗)

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