TOPLiving Style路地裏の極上住宅

優れた住宅をつくろうとするとき、その原動力になるのは、建て主が見せる強い意欲とパワーであり、建築家が示す熱いスピリットとアイデアである。東京において、極上住宅は路地裏に生まれ、育ち、鍛えられてきた。これは、路地裏で身を粉にしてきた建築家が、活動の舞台を表通りにまで広げ、さらなる極上住宅をつくろうとする物語である。

極上住宅のクライアント ~多様化する発注者たち~

変貌を遂げるクライアント

 住み手の状況は時代とともに移り変わるのが常です。50年前の世帯が平均4人であったのに対し、現在では2.5人と激変しました。最も数が多い世帯は一人暮らしであり、その次に多い2人暮らしを合わせると6割にも達しますから、かつての大家族のルールは現代にはまったく通用しなくなったといえるでしょう。

 当然のことながら住宅はダウンサイジングされ、自分たちの身の丈にあった空間を求める人々が増えました。かつてのように広い家にあこがれるのではなく、小さくても良いので都心の便利な場所を求める傾向が出始めたのが2000年代の初めのころです。

2001年竣工の「SEVEN」。建坪9坪あまりの縦に続くワンルーム空間は、都市生活の一つのスタイルを生み出した(写真:中村友則)

 衣食に関してもファストフードやファストファッションが広く浸透しています。マイカーに対するあこがれも減少し、とりわけ若者は贅沢(ぜいたく)をしません。デザイナーズブランドやグルメブームに沸いたバブルのころには誰も想像できませんでしたが、節約志向や健康志向に興味の中心がシフトしていることは間違いありません。

 住まいのデザインに関しては、以前よりもこだわる人が増えてきました。彼らの多くは市場で流通する既製の商品住宅では満足が出来ず、自分たちに合わせてカスタマイズされたオーダーメードの極上住宅を手に入れたいと願っています。

 インターネットや雑誌から好みの建築家を探し出し、積極的にアプローチを行うのは今では珍しいことではありません、彼らの中にはオリジナルのライフスタイルや好みのデザインが既に存在していますから、建築家に対して堂々とプレゼンテーションを行い、自分たちの希望を上手に伝えています。

施主のこだわりをデザインに取り込むことで、住宅の特性がくっきりと浮かび上がる(写真:西川公朗)

施主自らが施工にも携わった「EDGE」。デザインへの理解度が高まり、自宅への愛着度が深まったという(写真:西川公朗)

 この10年の間に新たなタイプの建て主も続々と出現しています。彼らはまさしく時代の産物であり、その独特のオリジナリティーには興味深いものが見受けられます。

 もちろん建て主自身が変化しているわけですから、住宅のデザインも多様化しています。人間や生活の根本は大きく変化しませんが、時代や社会の変化とともに求めるスタイルや流行の選択肢は格段に広がりました。ほかと同じようなかつてのような他社と同じスタイルでは満足できない人が増え、おのずとオーダーメードへと気持ちが向かうのでしょう。

 この10年間で私が携わってきた80棟ほどの住宅の建て主は30代が中心です。個性的でこだわりを大切にする方が大勢いましたが、彼らの特性をあらためて振り返ると、様々な考え方が存在していることが分かります。

自らのライフスタイルに対して忠実に設計していくことで、質の高い空間が生まれる(写真:西川公朗)

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