TOPLiving Style路地裏の極上住宅

優れた住宅をつくろうとするとき、その原動力になるのは、建て主が見せる強い意欲とパワーであり、建築家が示す熱いスピリットとアイデアである。東京において、極上住宅は路地裏に生まれ、育ち、鍛えられてきた。これは、路地裏で身を粉にしてきた建築家が、活動の舞台を表通りにまで広げ、さらなる極上住宅をつくろうとする物語である。

極上の家具 ~空間を触発する家具デザイン~

人間を空間に定着させる造作家具

 オーダーメードの家づくりを行う際に欠かせないプロセス、それが家具の設計です。いすやテーブル、棚などは空間に合わせて一からつくる場合が多く、私たちはそれらを、既製家具に対し、造作家具と呼んでいます。

 基本設計に一区切りがつき、実施設計のはじめに取り掛かるのが造作家具の設計ですが、場合によっては、家具の存在自体が住宅の中心になる場合もあります。その際は、企画設計の初期段階から家具を想定しながら、空間の輪郭をイメージし始めることになります。

 造作家具は空間の単なるオプションに留まらず、最近では家具こそが空間を決定付ける要因になっているケースも増えてきました。造作家具が構造体になることや壁面のすべてが造作家具で囲われたりする家なども、最近ではさほど珍しくはありません。

迫力のある造作家具が空間全体の印象を決定付ける(写真:西川公朗)

 造作家具にはモノを収納するという役割に加え、腰掛けたり寝転がったりというような人間の基本的な行為をはじめ、食事や勉強など、生活におけるあらゆるシチュエーションで人間を支えるための役割があります。

 また、オブジェとしての空間にフォーカルポイント(中心)をつくり出すのも家具の重要な役割です。その場合は、造作家具の出来栄えが住み手の心地良さに直結することになります。

 当然のことながら、初期段階から空間を想定して設計を進めなくては、深い部分でジャストフィットする住宅にはなり得ません。人間の真の意識を空間に定着させる装置、それこそが、造作家具の役割の本質なのです。

変形プランに合わせてしつらえたダイニングキッチン。床の段差を利用し、視線をクロスオーバーさせる(写真:西川公朗)

建築と家具が領域を越えながら、それぞれのデザインを融合させることで、一つの空間へと収れんする(写真:西川公朗)

 造作家具の設計では素材や色の選択などのインテリアの要素が大切であるのはいうまでもありませんが、照明を組み込んだり空調や設備機器をビルトインするなど、ハードの設計もカバーしなければなりません。

 すなわち、家の中にもう一つの小さな家を設計するような感覚で造作家具のデザインに取り組む必要があるのです。そうすれば、家具自体が空間を触発する存在になり、空間と絶妙のコラボレーションを生み出し始めるのです。

家具の存在意義を十分に把握し、それを美しく建築に取り入れることで、機能的な生活が可能になる(写真:西川公朗)

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