TOPLiving Style路地裏の極上住宅

優れた住宅をつくろうとするとき、その原動力になるのは、建て主が見せる強い意欲とパワーであり、建築家が示す熱いスピリットとアイデアである。東京において、極上住宅は路地裏に生まれ、育ち、鍛えられてきた。これは、路地裏で身を粉にしてきた建築家が、活動の舞台を表通りにまで広げ、さらなる極上住宅をつくろうとする物語である。

極上のディテール ~細部に宿る美について~

美意識は細部に宿る

 ギリシャの建築家ウィトルウィウスは著書「建築十書」の中で建築の基本を「用・強・美」の三位一体であると定義づけています。そのひとつである「美しい空間」に漂う上質感や美的な要因のひとつに、「細部のこだわり」というものがあります。

 そこに表出する細やかな職人的技法には、表面上の美しさとは対照的に、気の遠くなるほど地道な行為の積み重ねが隠されています。そのことを、我々は「こだわり」と呼びます。数多くの職人が名人芸といわれる作品を生み出してきた歴史が日本にはあります。

 丁寧につくられた空間に実際に対峙(たいじ)すると、専門知識の有無にかかわらず、人はたちまちそれを感知してしまいます。理論を超えた感覚の領域で人間に訴えるのがディテールなのです。

洗練された建築は、細部まで追究した設計の集積であり、その意図をくみ上げた技の集合体である(写真:西川公朗)

 全体を考慮しながら細部を窮め、同時に細部を考慮しながら全体を窮める。そのようなフィードバックを幾度となく繰り返すうちに、空間にはぼんやりと輪郭が生まれ、品格が宿り始めます。

 日常の時間に耐えうる住宅デザインにおいて最も重要なことは、細部と全体の関係をいかにバランスよく窮め、さりげない「こだわり」を挿入したかということに尽きるのではないでしょうか。

国外のプロジェクトであっても、デザインマネジメントを十分に行うことで、日本と同様の繊細なディテールを生み出すことができる(写真:APOLLO)

細部へのこだわりについて、粘り強く情熱をもって現場に伝えることで、高度なディテールは誕生する(写真:APOLLO)

 細部を洗練させないのは野暮ですが、洗練させすぎてもかえってこれ見よがしになってしまうため、そのバランスが最も難しい。これしかないという絶妙な塩梅(あんばい)で秩序を与え、緻密に調節することが建築家の作法であり、ディテールマネジメントであるといえるでしょう。

 我々もこれまで数多くの住宅デザインを通してディテールを生み出してきましたが、いつしかディテールそのものが建築家の特徴を表す要因になっているケースもあります。その特徴を一言で表現するならば、「徹底的に無駄を排除し、できるだけ素直に表現する」ということ。無駄を削ぎ落とし、必要なものを残すことで、合理美へとつながるのです。

細部へのこだわりは建物の品格を高め、極上の空間を演出することになる(写真:西川公朗)

おすすめ情報(PR)