TOPLiving Style路地裏の極上住宅

優れた住宅をつくろうとするとき、その原動力になるのは、建て主が見せる強い意欲とパワーであり、建築家が示す熱いスピリットとアイデアである。東京において、極上住宅は路地裏に生まれ、育ち、鍛えられてきた。これは、路地裏で身を粉にしてきた建築家が、活動の舞台を表通りにまで広げ、さらなる極上住宅をつくろうとする物語である。

極上の光と影 ~空間をつくり出す陰影の力~

空間に描かれる光と影の絵画

「構造体は光を与え、光は空間をつくる」。これは建築家のルイス・カーンの言葉です。住空間を考えるときに欠かすことができない要素が「光」と「影」であり、カーンは生涯のデザイン活動を通してそれを探求し続けた建築家の一人です。

 反射光、回折光、屈折光、拡散光、分散光など、空間に放たれるさまざまな可視光線を建築家が自在に操ることで、住空間は決定するといっても過言ではありません。また、光の美しさは受光面のコンディションにも左右されることから、素材や色、仕上げも光のデザインであると言えます。

回折光による美しい光と影のグラデーションがコンクリート打ち放し面に広がる。余計な影が生まれないよう、窓枠と天井の取り合いに細心の注意を払っている(写真:西川公朗)

 光と影の間には無数のグラデーション(あいまいな中間領域)が存在しますが、住宅をデザインする際、このグラデーションを完ぺきにコントロールすることは容易ではありません。それゆえ、我々の予想を超える美しい光の空間が生まれ、驚きや感動を与えてくれることもしばしばあります。

 人間は時間とともに変化する生き物ですから、光のデザインにも柔軟性が求められます。光がなければ、色味や空間を感じることはできません。光と影に包まれることで、空間には鼓動が生まれ、うつろいの中で個性や感動が生まれるのです。

 例えば、吹き抜け上部に設けたトップライトや、落ち着きのある和室の地窓から取り込まれる光の仕掛けは、空間の用途や個性を決定づける要因になります。我々が空間をデザインする際、無意識に光のポジションを確認するのも、うつろいゆく光の特性をできるだけ的確に空間に反映させる必要があるからです。

連続する小屋梁によって生み出されたシャープな光の筋が、壁面に施したタイルの表情をより浮かび上がらせている(写真:西川公朗)

光と影の移ろいによって空間は変化し、我々に驚きや感動を与えてくれる(写真:西川公朗)

 あるときは光を求め、またあるときは影を求める。光と同様にうつろいやすい人間が、光や影と共存しながら、どのように振る舞うかを思案するのが住宅デザインの基本です。瞑想(めいそう)にふける、食事を楽しむ、読書にいそしむ。あらゆる生活の断片に心地良く呼応するように、光の濃淡や差し込む角度などを十分に理解したうえで、デリケートに調整しなければなりません。

 住宅とは、光と影の戯れを映し出す巨大なキャンバスだと言えるでしょう。建築家は時とともに変化し続ける光と影という絵筆を駆使しながら、住空間に美しく豊かな絵画を描かなくてはならないのです。

外部から差し込む光が打ち放しコンクリートに繊細な陰影を浮かび上がらせ、ダイナミックでありながらもきめ細やかな空間が演出される(写真:西川公朗)

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