TOPLiving Style路地裏の極上住宅

極上住宅とは何か ~デザインという贈り物~

時を超えて生き残るデザイン

 クライアントの情熱と信頼は、時に建築家に海を渡る機会を与えることがあります。ここ数年で海外において住宅を手掛ける機会も増えてきました。日本がいかに不況でも、世界には好況な場所はあります。むしろ、国内の不況こそが海外での出会いを与えてくれたといえるでしょう。

 5年ほど前からサテライトの拠点を設けた韓国ソウルでは、家づくりはもちろん街づくりの一環も行っています。200年、300年と継続する街並みをつくりたいと願うクライアントの夢が住宅のスケールを超え、様々なデザイナーやアーティストが加わる街づくりへと進化しています。これも、一人のクライアントの情熱にほかなりません。国境を越えて依頼してくれたクライアントには、信念が人を動かすということを教わりました。

異なるバックグラウンドを持つ韓国での活動では、シンプルかつ力強いビジョンを提示することで、あらゆる壁を乗り越えることができた(撮影:西川公朗)

 アジアのみならず、米国や豪州など世界のクライアントから依頼をいただくうちに、日本発のデザインが世界に認められていることを実感しました。様々な国の美意識や生活哲学に触れることは実に興味深く、文化や背景を十分に知らなくては上滑りしたデザインに留まってしまいます。

 人の数だけ文化的な背景があり、正解があります。時としてつくり手は自分の正解を相手に押しつけがちですが、言葉や文化が異なるクライアントにはそのような一方的なやり方は通用しません。ローカルな問題を前提にしながらグローバルにデザインをすることが建築家の役割であることを、海外プロジェクトから学ぶことができました。

 グローバルな活動ができるのは、インターネットメディアが極東の日本人の活動を世界に届けてくれるからにほかなりません。2008年からは専属の広報担当と協力しながら独自でニューズレターなどを作成し、国内だけではなく海外の人々にも情報を提供する機会を意識的に増やしてきました。これらはデザインの方向性にも大きな影響を与えています。

 例えば、イギリスの「dezeen」やチリの「archdaily」などのデザイン全般を扱うポータルサイトは、日本国内の建築月刊誌のおよそ1000倍のデザイン・アート関係者が世界中で閲覧しています。それゆえ閲覧者の批評も迅速かつダイレクトで、公平かつ様々な視点からの厳しい指摘につくり手も多くの気づきを得るのです。

海外のプロジェクトは建築に関わる専門家だけでなく様々な分野のプロフェッショナルが協力し合うことで、成功へと導かれる(写真:APOLLO)

韓国のマダン(中庭)から着想を得た城北洞に建つコートハウス(写真:西川公朗)

 業界の内側に対して作品を発表し、評価を得ようとする行為はデザインの世界では日常です。しかし、ドメスティックな展開に留まるほど、外の世界に対してアプローチすることは難しくなるため、ともすればデザインの可能性を狭めてしまう危険があります。

 極上住宅をつくるときにも大切なことは、ドメスティックなデザインに決して陥らないようにすることです。どれだけたくさんの人々に届くか、どれだけ離れた人々の心を揺さぶるかは、設計者の力量であると同時に、クライアントの意志の力でもあるでしょう。

 インスタントかつコンビニエンスなモノづくりを極力避け、十分に時間を掛けた深く浸透するデザインを、どれだけたくさん社会に提供できるかが問われています。それは、建築家、クライアント、メディアに共通する、今後の大きな課題なのです。

アートギャラリーのようなファサードの極上住宅は城北洞界隈の住民にも注目の的である(写真:西川公朗)

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