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うちの施主のおかしな注文
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プロフィール 実作品 国際設計競技案
京都で「おかしな人やんな」と言われたら、「面白い人ですね」「変わった人ですね」のいずれかを意味する。これは、「施主のおかしな注文」をエネルギー源にして活躍する新進建築家、中村安奈と神野太陽(イースタン建築設計事務所)の住宅設計物語である。
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異境の故郷
狭い敷地

 「石山は“都”だったんです」
 なぜこの建築をつくろうと思ったかを聞いた時、施主は言った。(手にした敷地が)「…石山だったからですよ」。


敷地は10×18メートル。180平方メートル(55坪)の敷地に、延べ面積745平方メートルのビル。滋賀県では珍しい小規模ののっぽビルだ

 石山(滋賀県大津市)は、琵琶湖の南から流れ出る瀬田川のほとりの町である。今、この建築から、南に山が連なっているのが見える。その山の中に「石山寺」がある。紫式部が十五夜の月下、この寺で「源氏物語」を起筆した、と言われる。


周辺が雑然とした場所だから、あえて力強い造形を選ぶ。2階の内部

 山麓の町は、山の信仰が途絶えると寂れる。今は裏町といった風である。
 老舗の近江牛の店などもあるが、街路には、パーマ屋、ファストフード、携帯ショップ、丼ものチェーン店、居酒屋、寂れた風俗店が並ぶ。昔からあって、最後までがんばっていたボウリング場は解体された。


斜めに貫入するガラスから通りがよく見える。外観から想像するより、内部は驚くほど開放的だ

 施主は、この町の生まれではなく、信楽(しがらき)の生まれだ。そしてかれは、今、草津に住んでいて、その地を中心にいくつかのビル(賃貸経営)を持っている。
 私たちがつくったのは、下部3階がテナント店舗、上部5階が集合住宅(賃貸マンション)、8階建てのビルである。

舗道から建築を見上げる。この造形は、かたまりを削りとった切り口がガラスとなっているのが特徴。がっちりした造形だが軽い

 かれが選んだ敷地は、JRと京阪電鉄が乗り入れる石山ターミナル駅の、線路のすぐ裏南、10×18メートル(55坪)の土地であった。






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