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うちの施主のおかしな注文
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プロフィール 実作品 国際設計競技案
京都で「おかしな人やんな」と言われたら、「面白い人ですね」「変わった人ですね」のいずれかを意味する。これは、「施主のおかしな注文」をエネルギー源にして活躍する新進建築家、中村安奈と神野太陽(イースタン建築設計事務所)の住宅設計物語である。
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ラブストーリーと2つの建築
一人の施主がつくる2つの建築

 今回は、2つの建築の話をする。2つとも、工事が始まったばかりである。完成したものではない。お見せしているのは完成予想図である。

 施主は一人である。施主は一人なのに、なぜ2つか?
 一人の施主が、2つの建築を同時につくったからだ。一人の施主が主人公である。もう一人、隠れた主人公がいる。きらきらした女がいる。これは、一人の施主の恋物語と、2つの建築の話である。男が抱く、夢の、2つの形である。
 話が複雑にならないように、だれの話で、どっちの建築の話をしているかを〈 〉で示しながら話を進める。


“青い客船”。広い敷地の真ん中に建つ。グレーに近い青一色。横ラインが“うねる”。それらの強い横強調のラインで統一されている。オフィスとマンションの複合である

〈“青い客船”の話〉
 1つは、かれのホームグラウンドにつくる。かれの仕事場でもある。青い客船のような建築である。広い敷地の真ん中に堂々とつくる。オフィスとマンションの複合ビルである。地域のランドマークとしたいという思いもある。「度胆を抜くようなものにしてくれ」という注文だった。
 私たちには珍しく、完全なるバルコニー・デザインである。それをやるならやるで、限界に挑む。必要不可欠なものを使い、最大限の立体効果を出す。横ラインが彫刻的にうねる。あとで詳しく話す。


三角形の建築“宝石”。石、ガラス、ガラスブロック、コンクリートに白い塗装、グレーの塗装、ブルー・グレーの塗装、黒に近い青い塗装…、さまざまな要素が、さまざまな光を受けて光る

〈“宝石”の話〉
 もう1つ在る。敷地は三角形だった。それをそのまま三角形の建築とした。  「宝石にしてくれ!」、それが施主の注文だ。あとでわかることだが、かれはこれを、惚れた女のためにつくる。そういう強い動機に身をまかせて言ったのだった。そのときはただ、「変わった土地だろう?」、そう、嬉しそうに笑った。

〈施主の話〉
 施主は、凄腕のブローカーである。
 私たちは2つの建築を同時に設計し、また、今、この2つの建築の工事を同時に進めている。






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