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うちの施主のおかしな注文
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プロフィール 実作品 国際設計競技案
京都で「おかしな人やんな」と言われたら、「面白い人ですね」「変わった人ですね」のいずれかを意味する。これは、「施主のおかしな注文」をエネルギー源にして活躍する新進建築家、中村安奈と神野太陽(イースタン建築設計事務所)の住宅設計物語である。
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庭と入り口と夜
花々の収穫

 3つの計画案について話す。ずいぶん前の案である。どれも実現しなかったが、はっきりした考え方による案だ。

 3つの案の見どころを表にした。もう施主ではなくなったのだから、その職業や人生については、ほとんど触れないことにする。


3つの案のみどころ。タテ(列方向)に、第1案、第2案、第3案を並べている。ヨコ(行方向)は、上からELEVATION(立面)、PLAN(平面)、PERSPECTIVE(透視図)を示す

 第1の案。

 施主は、ある土地を持っていたが、当時は使っていない。55×33メートルの広い土地に、集合住宅を建てるという。
 「美しい庭が欲しい」、それが施主の注文だった。

 私たちは、水と建築との美しい関係をつくろうと考えた。敷地が大きいことから、建築は5つの棟とした。
 (3階建て。1棟に6住戸。全部で30戸)

 一戸建ての住宅にとって庭が重要であることと同じように、集合住宅でも庭は重要だ。


5つの棟は、V形の、渡り鳥の配列。それぞれの棟の前に水面をたたえている。夏の空の下にそれを描いた

 5つの棟は、それぞれ水面をたたえている。

 窓は、

・ 水に映って美しいように
・ 風景を象徴的に切りとるために
・ 隣の建築の窓も、楽しんで見えるように
・ 窓辺の人が、美しい絵となるように

つくられている。

建物の美しい窓のなかから、浜辺へ降りていくように、外へ出る。水に映る窓の形を眺める。水に浸された窓が波うつ。これらの窓のうちの一つが、ここがあなたの家の窓だと告げる

・ それぞれの建築の窓をつくっているのではない。5つで1つの建築である。
・ 1つ1つの窓の形にこだわっているのではない。すべてで1つの姿を持つ。
・ 水に姿を映す窓のふるえも、あわせた、すべての。

 庭の水と窓は、人が、虚と実の美しい形のなかを通って、建築の内部へ入るという、建築内部が持つ本来の夢を物語る。

 その夢は、

 建築の窓は花である。花のように様々な形をつくる。
 建築は消え、窓と水だけでできている1つの世界になる。

土地を一杯にする水と窓の形。そのどれかの形のなかへ、人は入ってゆく





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