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うちの施主のおかしな注文
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プロフィール 実作品 国際設計競技案
京都で「おかしな人やんな」と言われたら、「面白い人ですね」「変わった人ですね」のいずれかを意味する。これは、「施主のおかしな注文」をエネルギー源にして活躍する新進建築家、中村安奈と神野太陽(イースタン建築設計事務所)の住宅設計物語である。
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つきあい道
いろいろな道

 今回は、道について話す。私たちがつくる建築のなかに通っている道のことである。車がぶんぶん走り過ぎていく国家的なハイウェイではなく、どこまで行っても自分の居場所がない幹線道路ではなく、自分の物語がある道のことである。


私たちが出会った様々な道。京都伏見の住宅街の小道、軽自動車しか通れない細い道は、人のほうが堂々と歩く キューバの旧市街の道、物はなくても、いつも楽しそうな人々(*)

 その道を讃(たた)えることができるような、居心地の良さや、たたずまいがある、生活の場としての道、内なる記憶に根ざしている道のこと、互いが互いを知っている人たちが歩く道のことである。

 …この坂を下ったら、食料品店があるから、その先の花屋の角を南に入ったら、神社が見えるわ…、そう人を案内する間にも、住んでいる人たちの顔や、頭のなかで、自分の思い出を、全部話すことさえできる。そういう、“つきあい道”のことである。


川を渡る橋、歩道だけ 神社の鎮守の森の隣の道、毎日子どもたちが家へ帰る

寺の門の道、いつもきれいに掃除されている 寺の前の坂道、地蔵様はいつも新しいお供えがある

 ここで話すそれぞれの家は、その住人を象徴する大事な場所を内に持っている。それは、庭であったり、ぽっかり開けた空であったりする。そこに住人の幸せが集まっている。私たちはそれを“秘めたる内庭”と呼ぶ。そこから、町へ、道がつながっている。この道を、それぞれの家が、それぞれかけがえのない仕方で“開く”。

 家は、住人を象徴する形を持ち、その人の世界がつくられる。形をつくるのは、暮らしのリズム(息)である。それは、道に息づく。


キューバの海水浴場のすぐそばの道、土産物屋も看板もない(*) 山の“けものみち”、小学校の教科書に「あの坂をのぼれば海がみえる」という小説があったが、この道を歩いた時、その小説を思い出した(*)

 6個の建築に、6通りの異なった道が入り込んでいる。それぞれ違う光を持つ。

 道の話が、3つずつ、2ページに分けて書いてある。それを表にしておく。道の話を〈r〉、建築のなかの道の話を〈ar〉と表す。


〈r〉は、その道の原初的な姿を話す。道・roadの略〈r〉である。
〈ar〉は、そこから考え方を引っ張ってきて、できた、建築・architectureのなかの道・roadの略〈ar〉である。






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