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うちの施主のおかしな注文
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プロフィール 実作品 国際設計競技案
京都で「おかしな人やんな」と言われたら、「面白い人ですね」「変わった人ですね」のいずれかを意味する。これは、「施主のおかしな注文」をエネルギー源にして活躍する新進建築家、中村安奈と神野太陽(イースタン建築設計事務所)の住宅設計物語である。
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死を待つ家
朝日の家

 「死を待つ家だ」。施主は言った。
 「あと15年で死ぬ。その死を待つ家だ。建築は15年もてばいい。小さくていい」

 「場所は見つけたんだ」。東に向く半島の土地だった。「東に向かっている土地がよかった。夕日は嫌だ」。
 「おれが死ぬときには、夕日じゃなく朝日がいい。海へ向かって、船をびゅーっと出して死ぬんだ。死ぬとわかったときにはな」

多角形の窓から波のきらめきをみる

 これが施主の注文だった。日の昇る東の海がいい。かれが選んだ土地は、ここだ。

私たちが捉えた海。敷地の両側にみえる半島を抱え込む

 敷地の前には、幅4メートルの土と砂利の道。その向こうは、パークゴルフ場(近くのお年寄りが一日に数組、のんびりとまわっている)。その防波堤の下に海岸があった。普通に建てても、海はわずかしか見えない。

潮の満ち引きは、季節とともに、時刻とともに変わるが、敷地から「波」までの距離は約150メートル

床の高さは、水面から約8.6メートル。座った時にちょうどよい波の見え方をする高さ

 「床を高くあげるようなものになるんだから、あなたたちがいいいだろう」と、私たちに声がかかった。

 すぐに、その海辺へ、
         海岸へ、

 向かった。こんな地図のなかを、片道180キロメートル。期待に胸をふくらませて。

敷地のある海岸は、この丸い地図の外にある。この丸い地図は、日本で、私たちが仕事をしてきた土地。今回の仕事は、その円から出た! 神々しい鈴鹿山脈と伊勢の山あいを抜けて行く

 渚へ。

二重の窓と海と空

早朝の光が多角形の窓に差しこむ。窓の重なりの上に、さらに光と影が重なって、建築全体で朝の音楽を奏でるよう



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